研究概要 |
魚類の卵成熟誘起ステロイドホルモン細胞膜受容体のクロマトグラフィー法による精製法の基本手法を確立した。また、親和性クロマトグラフィー法へ応用するために、卵細胞膜上でこの受容体と強く相互作用していると考えられるGTP結合タンパク質のサブタイプを特定し、その遺伝子の全長のクローニングに成功した。 コイ卵母細胞の卵細胞膜画分から、0.2%シュークロースモノラウレートにより受容体を可溶化後、イオン交換、ヒドロキシアパタイト1、ゲル濾過、ヒドロキシアパタイト2の各クロマトグラフィーにより受容体の純度を相当程度高めることが出来たが、完全な精製には不十分であった。より、効果的な分離原理を導入するために、受容体と結合している百日咳毒素感受性GTPタンパク質(Gi)のサブタイプの同定を行った。材料には、特定の発達段階にある卵母細胞の単離が容易であるメダカを用いた。 メダカ卵母細胞で発現しているGiはGi1およびGi2であることをRT-PCR法で確認した。このことから、卵成熟誘起ホルモン受容体と結合しているGiのサブタイプは、Gi1およびGi2であることが明らかとなった。次に、これらGi1、Gi2の遺伝子をクローニングした。それぞれ354,355のアミノ酸から成り、ラットのGi1とGi2に対して94%、85%と高い相同性を示した。魚類のGTP結合タンパク質のクローニングは世界で始めてである。翻訳したアミノ酸配列をもとに合成したペプチドを用いウサギに免疫し、Gi1とGi2にそれぞれ特異的なポリクローナル抗体を作成した。次に、メダカ卵細胞膜から可溶化したホルモン受容体が、作成したポリクローナル抗体を用いることでメダカGiと共に免疫沈降法で回収されることが明らかとなった。(本結果は、現在、国際誌に投稿中である。) 以上、本研究において、魚類卵成熟誘起ホルモン受容体の精製とクローニングに重要な知見が得られた。
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