高等動物の形態形成過程において特定の細胞集団があらかじめ決められているかのように死滅する、いわゆるプログラム細胞死という現象が生じることが知られている。この細胞死の解析は、形態形成のメカニズムをあきらかにすることに繋がるのみらず、関連現象であるアポトーシスの分子機構の解明にも示唆を与えるものと考えられる。本研究においては、ニワトリ胚肢芽の形態形成時における細胞死に伴って発現量が変化する"細胞死関連遺伝子"を単離し、これらの遺伝子の塩基配列を決定後、胚での発現部位を解析し、またアポトーシスとの相関を調べる。 これまでに細胞死をおこし始めた指間間充織と、細胞死をおこす一日前の胚芽組織を出発材料としてcDNAサブトラクション(引き算)法を用いて"細胞死関連遺伝子"をクローニングし、細胞死にともなって発現量が増える遺伝子を3種類取得した。またBrdU処理によって指間のアポトーシスが特異的に阻害されるという本実験系の利点を生かして、アポトーシスの前に発現が始まり、指の組織やBrdU処理した胚の指間組織では発現していない遺伝子をdifferential display法によって取得する試みを行なってきた。 本年はこのBrdU処理で発現量の下がる"細胞死関連遺伝子"をdifferential display法によって取得する試みを続行し、更に5種類のアポトーシス関連cDNAの候補を得た。また同じ方法を用いてアポトーシスの進行とともに存在量が低下する(従ってBrdU処理胚の指間では下がっていない)バンドを得た。 このバンドに対応する遺伝子の産物は、アポトーシスの抑制に働いている可能性がある。今後これらの候補遺伝子のシークエンスを行い、胚発生での発現パターンの解析を行う予定である。
|