研究概要 |
コオロギ視髄は26対の視髄両側巨大ニューロン(MBN)により、単シナプス的に連結されている。MBNはいずれも視覚性介在ニューロンであり、形態と受容野から4種に大別できる。HPLC-ECDにより、MBN細胞体を含む組織に含まれる生体アミノ類を分析したところ、セロトニン、ドーパミン、オクトパミン、5-HIAAそれに幾つかの未知物質が検出された。MBNはセロトニン、ドーパミンの抗体で標識されないため、オクトバミンあるいはこの未知物質を伝達物質としている可能性がある。MBNの電気刺激後は反対側視葉のセロトニン量及びドーパミン量が現象することから、これらのアミンがMBNの情報伝達計に関与する可能性が示唆された。 4種のMB具のうちどれが左右の視葉概日時計間の相互同調に関係しているのかを、片側の視神経を切断し更に正常側の複眼を部分破壊した個体を用いて調べたところ、複眼後方背側部に受容野を持つMBN-4がそれらしことが示唆された。このニューロンの応答性の照度依存性、時刻依存性を解析したところ、自発放電がほとんどなく光照射に対してはon,offで一過性の応答を示すこと、その応答性は夜間の方が有意に高く、夜間のスパイク数は蛭の約2倍であることなどがわかった。しかし、応答の照度依存性は極めて低く、高照度でもスパイク頻度は夜間で50Hz、昼では25Hz程度であった。その他のMBNはいずれも、応答の高い照度依存性、時刻依存性を示すことが明かとなった。 これらの事実は、MBN-4が応答のスパイク数によって時計の時刻情報をコードし、反対側の時計へ伝達している可能性を示唆している。また、応答性やその日周変化は各MBNグループによって異なることから、時計の相互同調系に関わるMBN-4以外のMBN群の時計システムに関連してそれぞれ独自の生理的機能を持つらしいことが示唆された。
|