研究概要 |
フォスファーゲンキナーゼ(PK)はリン酸基転移酵素の一種であり,ATPのγーリン酸基を特異的基質が持つグアニド基へ可逆的に転移させ,ADPと高エネルギーリン酸化合物であるホスファゲンを生産する.PKとしては現在7種類は知られており,それらはクレアチンキナーゼ(CK),アルギニンキナーゼ(AK),グリコシアミンキナーゼ(GK),タウロシアミンキナーゼ(TK),ロンブリシンキナーゼ(LK),ヒポラウロシアミンキナーゼ(HTK),オフェリンキナーゼ(OK)である. 今回は,アミノ酸配列は決定されておらず,フォスファーゲンキナーゼの進化を考える上で重要な位置を占めるLKを中心に研究を進めた.まず,シマミミズEisenia foetidaからLKを単離精製し,その酵素活性を調べた.単離されたLKは分子量4万のサブユニットから成る二量体で,基質としてロンブリシンの他にタウロシアミンも用いることが解った.次にEiseniaLKのcDNAをPCR法によって増幅し,その完全な配列(2,677bp)を決定した.この結果,Eisenia LKは370残基のアミノ酸から成ることが推定された.さらに,そのアミノ酸配列を他のPKファミリーの配列と比較し,昨年報告されたKarin Fritz-WolfらによるニワトリのミトコンドリアクレアチンキナーゼのX線結晶構造解析の結果をもふまえて,フォスファーゲンキナーゼの基質認識部位の推定を行った.推定された基質認識部位は,今後,部位特異的変異誘発実験などのタンパク質工学的手法により検証されることが期待される.
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