研究概要 |
フォスファーゲンキナーゼ(PK)はリン酸基転移酵素の一種であり,ATPのγーリン酸基を特異的基質が持つグアニド基へ可逆的に転移させ,ADPと高エネルギーリン酸化合物であるホスファーゲンを生産する.PKとしては現在7種類が知られており,それらはクレアチンキナーゼ(CK),アルギニンキナーゼ(AK),グリコシアミンキナーゼ(GK),タウロシアミンキナーゼ(TK),ロンブリシンキナーゼ(LK),ヒポタウロシアミン キナーゼ(HTK),オフェリンキナーゼ(OK)である. 本年度は,フォスファーゲンキナーゼの進化を考える上で重要な位置を占める棘皮動物のAKを中心に研究を進めた.まず,マナマコからAKを単離精製した.他の無脊稚動物のAKがすべて単量体であるのに対して,単離されたナマコAKは分子量4万のサブユニットから成る二量体であった.次にナマコAKのcDNAをPCR法によって増幅し,その完全な配列(1439bp)を決定した.この結果,ナマコAKは370残基のアミノ酸から成ることが推定された.さらに,そのアミノ酸配列を他のPKファミリーの配列と比較したところ,既知の単量体AKより,二量体を形成する脊准動物のCKとより強いアミノ酸配列の一致率を示した.これはナマコAKが,AKの遺伝子より進化したのではなく,CK遺伝子から進化したことを強く示唆している.また,特筆すべきこととして,ナマコAKのアミノ酸配列において,我々が基質認識部位と推定している領域(GS領域)だけがCK型ではなく,AK型に変わっていたことがあげられる.
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