我々は現在までに、単細胞生物ブレファリスマ(Blepharisma japonicum)の光行動をコントロールする光センサーが、ロドプシンとは全く異なる新しい光受容分子であるキノン/200kDタンパク質複合体であることを明らかにしてきた。本研究では、この光センサー複合体の機能と構造を解明することを目的とし以下の研究を行った。 1.キノン色素の立体構造:すでに明らかにしている分子構造から、コンピュータソフトMOPAC93(PM3)を用いて立体構造を推定した。さらに結晶構造解析に向けて色素の結晶化を試みているが、まだ結晶化には成功していない。 2.キノン色素の局在:ブレファリスマが5種のキノン色素を含んでいることを明らかにし、すべての構造を決定した。さらに細胞体の光感受性部位に局在するのはこのうちブレファリスミン-2(BL-2)のみであることから、BL-2が「本物」の光センサーであることを明らかにした。 3.キノン色素結合200kDタンパク質をコードする遺伝子の単離:200kDタンパク質の部分アミノ酸配列を決定した。この配列はある種プロトン輸送タンパク質と高い相同性をもつことがわかった。さらに、この配列をもとにしてオリゴヌクレオチドを合成し、PCR法を試みたがブレファリスミン色素がPCR反応を阻害するため、遺伝子の単離はできなかった。現在、色素をもたない細胞を使ってPCRを試みている。 4.光シグナル変換機構:細胞内pH指示薬の蛍光測定から、光シグナルが細胞内の局所的H^+濃度変化という細胞質シグナルに変換されることが示唆された。
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