研究概要 |
本研究は,軟体動物有肺類インドヒラマキガイのマルティドメインヘモグロビン(Hb)の構造解析を目的としている。本種のHbの構成単位は,ほぼ10個のドメインより成る長いポリペプチド鎖であることが著者らの研究により既にわかっている。従来のタンパク質からの一次構造決定法では、このような長いポリペプチド鎖の構造解析は著しく困難な場合が多いため,DNA塩基配列からの解析の足がかりとなるペプチド断片を得ることから始めた。1.Hbを直接スブチリシン処理して大まかに切断し,ゲル濾過によりモノドメイン画分とオリゴドメイン画分を分離した。最も効率良くモノドメイン画分を分離できるゲル濾過担体の選択のために Sephacryl 100HR,200HR,300HRの3種類のプレパックカラムを試みたところ、Sephacryl 200HRが最も適していることがわかった。またドメイン分離の全体のパターンを見るには300HRが良いことがわかった。300HRカラムによりスブチリシン処理の最適なHb/酵素比条件、最適な処理時間を吟味したところ,22℃下で50/1〜200/1,2時間がモノドメイン画分の収率が最も高く、これ以上の時間延長はノンヘムペプチド断片を増やす結果となる。Sephacryl 200HR調製用カラムにより分離したモノドメイン画分のSoret/260nm光吸収比は2.8で,native Hbでの同比2.6に近かった。2.この画分は電気泳動で少なくとも10以上の成分に分離されたので,各成分の単離をMono Qイオン交換カラムを用いて試みたところ4つの成分が比較的純粋に単離された。3.4つの成分のうち純度の高い2つのN末端アミノ酸配列を決定、そのうちの1つについては20残基分のアミノ酸配列が決定できた。4.その配列のうちで適当な部分を2箇所選び,それぞれに対応するオリゴヌクレオチドプローブを合成した。この合成プローブを以後のHbcDNAのスクリーニングに供する。
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