研究概要 |
マボヤHalocynthia roretziのアロ抗原を認識する体腔細胞の反応と受精における自家不和合性を支配するFu/HC遺伝子座をクローニングし、その遺伝子(群)によってコードされているタンパク質の構造とアロ抗原の認識と受精における機能を解明することを最終的な目的とした。本年度(平成8年度)は以下の成果が得られた。 (1)マボヤ体腔細胞の細胞膜分画でマウスを免疫し、体腔細胞の細胞膜に結合して体腔細胞によるアロ細胞障害反応を阻害する多数のモノクローナル抗体(CRB1,CRB2)を作製することに世界で初めて成功した。 (2)上記のモノクローナル抗体の認識するCRB1/CRB2抗原は細胞傷害を行うエフェクター細胞側と傷害を受ける標的細胞側のどちらにも発現していることを明らかにした。 (3)CRB1/CRB2抗原は貧食活性を持たない体腔細胞に発現していることを明らかにした。 上記のモノクローナル抗体の認識するCRB1/CRB2抗原の生化学的解析を行い、CRB1/CRB2モノクローナル抗体は多数の細胞膜糖タンパク質に共通に存在すると思われる糖鎖の共通構造と糖鎖の結合部位近傍のペプチドの構造の両方を認識している可能性が高いことを示した。ホヤのアロ抗原認識に糖鎖を認識するレクチン様のレセプターが関与する事を示唆する最初の結果が得られたと思われる。 上記のモノクローナル抗体の受精への影響を調べるとともに、マボヤ体腔細胞のcDNAライブラリーを作製して、モノクローナル抗体によるイムノスクリーニングを行っている。
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