我々はこれまでに、イネ・ゲノム中に多コピーで散在している種々の転移性遺伝因子を発見し、それらの構造的特徴を明らかにしてきた。本研究は、異なる座位に存在する数多くの各転移性遺伝因子のメンバーを分離・同定し、イネ各種の様々な系統における分布を調べることにより、イネ系統の分類と近緑関係の詳細を明らかにすることを目的とするものであり次の結果を得た。 1、異なる座位に挿入しているレトロポゾンp-SINE1及びトランスポゾンのメンバーの分離・同定:前年度において、p-SINE1及びTnr1(又はTnr2)のメンバーを、異なるイネ系統(0.sativa IndicaとO.glaberrima)から得られたtotal genomic DNAのライブラリーからスクリーニングし、いくつかのクローンを得た。本年度において、塩基配列の決定により各因子の両端及びflanking sequenceを同定した配列を基に1組ずつのプライマーを合成し、PCRを行うことによって、p-SINE1及びトランスポゾンのメンバーの中には、或るイネの系統には存在するが、他方には存在しないものがあることを示した。 2、p-SINE1、トランスポゾン各配列のメンバーの分布とイネ系統の分類と近緑関係の解析:本年度において、イネ各系統のこれまでの形態学的分類に捕われないで、各転移性遺伝因子の分布パターンを調べ、同じパターンを持つ系統を1グループとして分類した。さらにphylogenetictreeの構築して得られた結果とこれまでの分類体系とを較べた結果、我々の解析により得られた分類、近緑関係が、これまでのイネ系統に関する分類のいくつかには合うことが分かり、これまでの系統の分類に関する論争の根拠となった問題点を指摘することが出来た。 3、新規レトロトランスポゾンの分離・同定:上記の研究中に、イネのゲノム中に様々な新規のレトロトランスポゾンが散在することを見いだした。
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