RNAエディティングがあると、ゲノムDNAから予測されていたタンパク質のアミノ酸配列は実は架空のもので、真のアミノ酸配列はmRNAのアミノ酸配列からでないと推定することはできない。そこで我々は、ホウライツノゴケの葉緑体にあるrbcL遺伝子のmRNAに相補的なDNA(cDNA)を作りその塩基配列を決定することにより、mRNAの配列を調べた。その結果、20の部位でエディティングが行われていることを見つけた(前年度報告済み)。エディティング部位でコードされるアミノ酸の化学的性質を遺伝子構造から予測されていたものと比較すると、エディットされたためにコードされるようになったアミノ酸の方がより疎水的な性質が強い。これらのアミノ酸をRubico大サブユニットタンパク質の立体構造上にプロットすると、殆ど例外なくタンパク質の内部に位置することがわかった(論文準備中)。このことは、RNAエディティングなしでは、タンパク質は正しくホールディングできず、機能あるタンパク質はできないことを示唆している。 ホウライツノゴケ葉緑体のATPaseβサブユニットの真のアミノ酸配列を調べて、原始的な陸上植物の系統樹を再構築するために、atpB遺伝子のmRNAに対するcDNAを作り、その塩基配列を決定した。その結果、29の部位でのエディティングが見つけた。これはこれまで葉緑体で見つかっているエディティングの内で最も高頻度なもので、atpBのmRNAで見つかったのも初めてのことである。また、29部位の内14の部位ではリバースタイプと呼ばれているUからCへの変換が見られた。また、このmRNAの塩基配列を他の植物のatpB遺伝子の塩基配列と比較して、真嚢シダのリュウビンタイで3ヶ所、裸子植物のクロマツで1ヶ所のエディティングがあることを予言した(論文準備中)。
|