研究概要 |
島根県東部に位置する汽水域,宍道湖・中海の重要な基礎生産者である微小浮遊珪藻類の種類組成とその季節変化を明らかにするために,宍道湖3地点,中海4地点において1996年4月より1997年3月まで,毎月定期調査を行い,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いてその分類学的研究を進めてきた. その結果,確認された珪藻類は14属30種で,優占種はCyclotella hakanssoniae,Cyclotella sp.1,Cyclotella sp.2,Cycoltella sp.3,Thalassiosira pseudonana,Neodelphineis pelagicaであった. 出現種は宍道湖と中海で大きく異なり,前者はChaetoceros sp.,Cyclotella hakanssoniae,Cyclotella sp.1,Cyclotella sp.3,Thalassiosira pseudonanaなどの狭塩類〜広塩製種,後者はCyclotella hakanssniae,Cyclotella sp.2,Minidiscus comicus,Neodelphineis pelagica,Thalassiosira teneraなどの抗塩類汽水・海産種で特徴づけられる.これは両湖の塩分濃度の違いを反映しており,本水域では塩分濃度が珪藻類の種類組成を決定する重要な要因であることが示唆される. 季節的消長について,宍道湖では3月,4月にThalassiosira pseudonana,5月〜7月にかけてCyclotella sp.1,8月〜10月にはCyclotella sp.3が優占し,11月〜2月にはほとんど珪藻類は出現しない.中海では5月,6月にCyclotella sp.2が優占し,7月,8月には優占種はないが様々な種が出現した.9月,10月はNeodelphineis pelagicaが優占,11月〜2月はほとんど珪藻類は出現しないといった変動パターンが認められた.
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