研究概要 |
昨年度に収集したデータを補足するために同様の実験方法で研究を進め,蘚類、苔類についての減数分裂期の核と色素体,微小管の挙動を間接免疫抗体法を用いて,共焦点レーザ顕微鏡,光学顕微鏡で観察した.これまでの観察結果をまとめると,コケ植物で見られる減数分裂の様式は,色素体の数と隔壁形成様式に着目すると,大きく5つのグループに類型化できることがわかってきた.すなわち,(1)色素体を1つずつ持った正四面体型の胞子四分子を形成するグループ(蘚類Musciとツノゴケ類Anthocerotae),(2)多数の色素体を含む状態で減数分裂し,胞子四分子形成に先立って細胞質が4葉はくびれ,正四面体型の四分子を形成するグループ(苔類Hepaticaeのウロコゴケ亜綱Jungermanniidae),(3)多数の色素体をもった状態で減数分裂し,胞子四分子形成に先立って細胞質は4葉にはくびれず,四面体型に配列した四分子を形成するグループ(ゼニゴケMarchantia polymorpha),(4)多数の色素体をもって減数分裂し,胞子四分子形成に先立って細胞質が4葉にくびれず,双同側型に配列した四分子を形成するもの(ジャゴケConocephalum conicum),(5)多数の色素体をもって減数分裂し,胞子四分子形成に先立って細胞質が4葉にくびれず,線型に配列した四分子を形成するもの(ヒメジャゴケConocephalum japonicum).苔類で唯一知られる線型配列の胞子四分子をもつヒメジャゴケの特異性について,細胞学的に追求した結果,減数分裂の基本様式を逸脱するものではなく,分裂の場となる胞子母細胞の長楕円形という得意な細胞壁の枠組みの中で必然的におこるものであることを,細胞と核の大きさの計測から推定した.平成10年度では〓の組織分化を明らかにし,特異な形の細胞を生み出す組織的な背景を明らかにしたい. 蘚類を代表的するものとして,チジミバコブゴケ(Oncophorus crispifoliusの胞子形成過程の全容を捉えた.ここでは胞原組織は1細胞層で,構成する各細胞は3回の分裂で8個の胞子母細胞となり,それぞれが4個の胞子を生産することが明らかになった.
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