研究概要 |
1.コオリウオ科11属のうち,比較的互いに近縁とされているPagetopsis・Neopagetopsis・Pseudochaenichthysグループと,Chionobathyscus・Chaenocephalus・Cryodracoグループ,および,本科魚類の中で最も原始的な状態を多く示していると考えられているChampsocephalusの7属の魚類について,鰓弓,眼下骨,頭部感覚管,各鰭の形状について検討を加えた。 2.Pagetopsis・Neopagetopsis・Pseudochaenichthysグループにおいて,第2眼下骨の後下方の突出部の形成状態および頭部感覚管に発達段階の差が明瞭に見られ,それがそれぞれの属内での個体発生の序列に対応していることが示唆された。すなわち,3属の中で,Pseudochaenichthysが最も特化しているような状態を示しており,この属の稚魚期の状態をPagetopsisが保持しているという状態であった。また,Pagetopsisは成熟サイズが他の2属に比べ小さく,体側に暗色横帯を持つが,これも他属の幼魚期の状態に酷似しているため,本グループ内ではプロジェネシスによる進化が起こったのではないかと推察された。 3.Chionobathscus・Chaenocephalus・Cryodracoグループにおいては,特に腹鰭の発達状態に差異が見られ,Cryodracoが相対長の著しく長い腹鰭を持つことで,他属の幼魚期の形状を保持しているものと推定された。このことは,3属の相対成長を比較しても明瞭な傾向として認められ,本グループ内ではネオテニ-による進化が生じた可能性があるものと思われた。
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