1.国立科学博物館所蔵の中国産の資料に基づき、スギゴケ科1種、ハリガネゴケ科1種、チョウチンゴケ科2種の計4種5サンプルについてポリセティの観察を行った。スギゴケ科ではタチゴケ属を除いてポリセティはほとんど知られていなかったが、ニワスギゴケ属の一種Pogonatum fastigiatumでポリセティが観察された。 2.チョウチンゴケ科のムツデチョウチンゴケのポリセティを解析する目的で、ガメテシウムあたりの胞子体の数、その頻度、各植物体のサイズ等を調べた。ガメテシウムとは生殖器官とその保護器官である側糸と苞葉をまとめたものをいう。その結果、ガメテシウムあたりの胞子体の数は1〜8個、一番多いものは2〜4個であった。また、胞子体の数と植物体の大きさには関係が見られなかった。さらに、長野県、岐阜県、栃木県という地理的に離れた集団で行った調査でもほぼ同様の結果が得られた。 3.シッポゴケ科のナミシッポゴケについて、ムツデチョウチンゴケと同様に調べた。ガメテシウムあたりの胞子体の数は1〜6個、一番多いものは3個で、また胞子体の数と植物体の大きさには関係が見られなかった。さらに、ポリセティの頻度は狭い範囲(約5x5m)に分散する7つの個体群間で差が見られた。 4.日本産の蘚類について文献と標本によるポリセティの調査を行った。14科42種でポリセテイが報告されており、そのうち13科がマゴケ亜綱に含まれ、さらにそのうちの10科が植物体が直立し、生殖器官を茎の頂端に形成するグループに属するものであった。残りの3科のポリセティを示す種について標本を調べたが、ポリセティを確認することが出来なかった。このことは、ポリセティはガメテシウムが茎の頂端に形成されるグループに限られる可能性がある。 5.ヒナノハイゴケ科のヒナノハイゴケでポリセティを確認した。本科からはこれまでポリセティは知られていなかった。
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