ガラスを加熱すると水飴状に軟らかくなる「ガラス転移」を起こすことは古くから知られているが、本研究は当研究室で1995年に発見した「電子的ガラス転移」のメカニズムを明らかとし、かつ応用を考えることを目的として開始したものである。 その結果、以下に要約するような成果を得た。 1.光ばかりでなく、電子線や走査型トンネル顕微鏡STMによっても微細加工できることを発見した。電子線やSTMを用いると、サブミクロンの微細加工ができる。実際に、マイクロレンズや回折格子を試作した。 2.As_2S_3のような特定のカルコゲナイドガラスだけでなく、銀や銅を含むカルコゲナイドガラスでも、似たような現象が発現することを発見した。酸化物ガラスでは、原子間の結合に共有性が少ないので、類似の現象が発現しないと考えられる。 3.微細加工がなぜ可能なのかについて多くの新知見を得た。たとえば光を用いる場合には、自由キャリヤ-の励起が重要であることがわかった。 ただし、電子励起によってなぜミクロな流動などが生じるかについては、ナノスケールでの実験手段が十分でないことから、未知の点が多く、さらに研究を進めているところである。
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