本研究は原子層エピタキシ-(ALE)を活用して広い濃度範囲(10%程度まで)でのZnのCuGaS_2中での役割を明確にすることを目的としている。本年度は有機原料を用いた母体CuGaS_2のALE成長と、原料の同時供給(ALEではない)下でのZn添加CuGaS_2の成長実験を行った。まず、母体のCuGaS_2の良質なエピ膜を得るため、Ga材料として有機原料DEGaClを用い、金属材料(CuClおよびDEGaCl)と硫化水素の交互供給によってGaP(100)基板上でのALE成長を試みた。以前のGaCl_3を用いた成長と比較して、より広い成長条件下(基板温度、原料の供給量および供給時間)でALEを示唆する成長速度の単分子層厚での飽和が観測され有機原料の方がALE成長に適していることが分かった。また、交互供給で良質なエピ膜が得られた条件下でCuClとDEGaClも時間的に分離して供給する方法で成長を試みた結果、Cu->Ga->Sの順で供給すると交互供給の場合と同程度のエピ膜が成長するのに対し、Ga->Cu->Sの順ではCuとSの化合物に近い質の悪い膜が成長することがわかった。上記の実験と平行して手持ちの抵抗加熱炉を基に、添加不純物Znの原料を供給可能にする新しいVPE成長装置を作製し、その炉を用いて同時供給の成長条件によって、Cu:Ga:Znの供給比を変えてZnを添加したCuGaS_2のエピ膜の成長を行った。EPMA測定で求めた作製試料のZn濃度は2%以下から10%程度に分布していた。発光スペクトル、ラマン散乱、抵抗の測定から、Zn添加濃度が低いとZnはGa位置を置換してアクセプターとなるが、濃度が上がるとGa位置を置換出来なくなり格子間位置や、Cu位置を占めるようになってドナーとなることが示唆された。
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