研究概要 |
コバルト単結晶超微粒子内包ナノカプセルをアーク放電法により合成し,その構造,形態および磁気的性質を調べた。ナノカプセルの外皮はグラファイト層で出来ており,内部のコバルト超微粒子を酸化,融合から保護する。本研究では,その外殻グラファイト層の厚さの制御,およびhcp-Co超微粒子の作製を試みた。 1.グラファイト層厚さの制御 直径20nmのグラファイト棒に開けた直径5〜13mmの穴に,金属コバルトの顆粒を入れ,これをアーク放電の陽極に用いた。金属コバルトを入れる穴が小さい時(直径8mm以下)は,ナノカプセルの外皮は厚い(4〜6nm)のに対して,大きい穴(直径13mm)の時には,薄い外皮(1.5〜2・5nm)のナノカプセルが得られた。内包されたコバルト微粒子は粒径が10〜100nmで,構造はfccであった。外皮が薄い場合,室温のバルクに匹敵する160emu/gの飽和磁化が得られた。抗磁力は,コバルト微粒子の粒径に依存して,300〜600Oeまで変化した。 2.hcp-Co超微粒子作製の試み コバルトが凝縮する過程で,蒸気圧がより小さくて,同時にhcp構造をもつ核として作用することが期待できる金属としてOsを添加することを試みた。陽極に充填したCoとOsの混合物の割合(wt,%)とカプセル中のその割合(wt.%)との関係をEDX法で調べた結果,陽極混合物中のCo割合20〜100wt.%に対して,カプセル中のCo割合は88〜100wt.%とほぼ直線的に変わった。つぎに,X繰回折法によって,Coカプセルの結晶構造と平均粒子径を調べた結果,結晶構造はfccであった。一方,平均粒子径は,カプセル中のOsが0から12(wt.%)まで増大すると,25から10nmまで単調に減少し,Osの添加は結晶粒を小さくする効果があることが分かった。
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