本研究はカルコバイライト半導体による超格子構造の作製評価をを目的とした。有機金属分子線エピタキシャル法(MOMBE法)および分子線エピタキシャル法(MBE法)によるCuGaSe_2(Eg=1.67eV)およびCuAlSe_2(Eg=2.67eV)のエピタキシャル成長と超格子作製を試みた。 1.MOMBE法 両物質ともにGaAs基板上にc軸配向した成長層が得られ、X線回折、フォトルミネッセンス(PL)、反射変調粉光法、ラマン散乱法により良質のエピタキシャル層を確認した。CuAlSe_2/CuGaSe_2/GaAsヘテロ構造および膜厚約200Aの超格子構造を作製し、XPS法によるdepth-profileの測定を行った。表面の大きな凹凸の為、depth-profileは超格子の周期を反映しておらず、平坦な表面を持つエピタキシャル層の成長が課題である。 2.MBE法 GaAs基板上にCuGaSe_2およびCuAlSe_2の成長を反射高速電子線回折(RHEED)のその場観測により行った。成長時間を小さくすることおよびCu/GaやCu/Alの分子線束の制御により平坦な成長表面を持つエピタキシャル層を得た。CuAlSe_2/CuGaSe_2/CuAlSe_2単一量子井戸や(CuAlSe_2/CuGaSe_2)_m超格子の作製を行った。PL評価の結果、成長温度600℃においてGaとAlの相互拡散の為、混晶層が形成され、この為層厚200A以下では量子構造は混晶化していることがわかった。この為成長温度を550℃まで減少させGaとAlの相互拡散を低減することを試み、超格子作製の可能性が示唆された。 3.超格子電子帯構造の計算 半経験的tight-binding法によりCuAlSe_2/CuGaSe_2およびCuAlSe_2/ZeSe超格子の電子帯構造の計算を行った。CuAlSe_2/CuGaSe_2では200A以下の層厚で量子効果が確認され、またCuAlSe_2/ZeSeでは両物質が同じ禁制帯幅(2.67eV)を持つにもかかわらず100A以下の層厚では禁制帯幅が最大250meV増加することが計算上で確認され新しい禁制帯幅の制御法が提案された。
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