I.液体を原子間力顕微鏡のプローブと固体基盤に間に閉じ込めた場合に現われる密度構造と、溶媒和力(Solvation Force)を密度汎関数法にDerjaguin近似を組み合わせて計算した。分子間ポテンシャルとしてLennard-Jonesの12-6ポテンシャルを簡単化したもの、基盤と液体との相互作用として9-3ポテンシャルを用いた。特に基盤と液体分子の相互作用をHamaker定数の大きさを参考に系統的に変えて調べた。得られた結果の中で特徴的な点は (1)閉じ込められた液体の密度は常に振動し、液体と基盤の相互作用が強いほど大きく、これは溶媒和力の振動に反映する。 (2)基盤と液体分子の相互作用が小さいときには、基盤の距離が小さいところで毛管蒸発(Capillary Evaporation)が起こり、それに伴って溶媒和力に飛びが生じる。 II.原子間力顕微鏡を用いて表面のぬれ膜でおこる様々な相転移現象を理解するための現象論的なモデルを構築することを目的として、基盤近傍の液体の振動構造を考慮した統一的なぬれの現象論を構築した。液体の気-液表面張力と液体分子と基盤の相互作用の比、液体の振動の減衰長をパラメータとしてぬれの相図を構築した III.原子間力顕微鏡(セイコ-電子SPI3700)に溶液ホルダーを取り付け液体として分子直径約1nmのオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、吸着基盤としてマイカを使いフォース・カーブを測定したが振動する溶媒和力はノイズにまぎれて観測できなかった。
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