研究概要 |
1.超高真空下(≦10^<-7>Pa),下地タングステン(W)針状(tip)表面上に数十〜数百原子層厚のSiを真空蒸着した後に,温度が850-950Kで加熱処理(10秒〜3分間)されるとSiとW原子との混晶反応過程が始まる.特に結晶面W(001)面では下地W(001)面が拡大成長し,W(112)面ではSi原子が(112)面の原子チャネルに対して,直角の方位でSiの原子列が成長する.W(111)面上でも混晶反応過程は進むが,その成長層の原子配列構造は現状では確定できていない.しかし,W(011)面上ではSiとW原子との混晶反応は不活性である.混晶反応過程は蒸着Si層と最表面W原子層との間で支配的に進み表面シリサイド層が形成される. 2.加熱による成長表面シリサイド層と下地金属との界面の状態について,最表面層から-原子層毎を剥ぎ取ることが可能な電界脱離法により調べられた.50Kでの下で形成された蒸着Si層と下地W層とのinter-mixingは認められないが,Si蒸着後900-950K当たりでの加熱に於いてはSiと最表面W原子層間でinter-mixingは認められる.特にW(111)面とその周辺に於いては,他の面よりも2-3原子層厚まで,より深く混晶反応過程が進んでいることが認められる.そして下地の表面第一原子層を電界蒸発した後は,殆どの表面混晶層は剥ぎ取られるが,下地Wの完全な原子配列構造は最表面第3原子層が剥ぎ取られた後,現れることが確認された. 3.電界イオン顕微鏡法で表面シリサイド層の状態と原子配列構造が同定された後に,それらの構造に対応した電子的状態を探るために,電界放射エネルギー分析が構築された.現在,当分析器の分解能(現状の半値幅は100meV程度)とスペクトルの再現性向上に向け,FEES装置の調整・改良の段階にある.
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