全光学的信号処理に基づく光ATM通信の実現可能性を検証するために、光アドレス信号によって光データを直接ルーティング制御するシステムの動作実証を行うことを目的として、次の2項目について研究を行った。 1.伝送されてきた光信号(アドレス+データ)からアドレス情報を光信号のまま抽出する方法。 2.抽出した光アドレス情報を使って、これを電気信号に変換することなく時間軸上で多重化された光データの経路・行き先を制御し、ルーティングする交換システムの構成。 その結果、現行のATMと同じセルフォーマットを想定し、アドレスビットの先頭に2ビットのヘッダビットを付加することによって、伝送されてきた光信号からアドレスビットを抽出することが可能であること、アドレスおよびデータビットのビット間隔Tに対してヘッダビットの間隔を1.5Tとすることが目的に合致した最適な伝送セルフォーマットであることを明らかにした。また、このビット構成でアドレスビットの抽出を行う光回路を考案し、長距離光ファイバ通信で用いられる波長1550nm帯においてその動作確認を行った。 さらに、抽出したアドレスビットを用いて、ルーティング用光スイッチを全光学的に制御する信号を生成する光回路を考案し、その動作実証を行った。 いずれの光回路も、約8Mbit/secの伝送速度で原理確認のための動作実証を行ったが、実験結果をもとに本研究で考案した光回路の動作速度の上限を見積った結果、全光学的スイッチとして非線形ループミラーを利用して約240Gbit/secのビットレートまで対応できるとの結論を得た。
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