研究概要 |
1.吸収型光変調器の開発 初年度はp^+nn^+:GaAs基本構造を19対積層した面型変調器を縦6×横6個、2次元集積化した空間光変調器を試作し,「K」と言う文字画像を出力(7.5Vの駆動電圧で消光比8dB)することができた.しかしながら各素子への電気配線がないことや各素子間の電気的絶縁性が悪いなどの実用化に向けての問題点があったため、次年度は配線を含めて一体化した10行10列に2次元集積化した半導体空間光変調器の試作を行った.電気配線法として導電性透明膜を用いて配線パターンを施したガラス基板と素子を集積化した半導体基板とを張り合わせる方法を利用した.また、集積化に適した構造に素子構造を改良し、動作電圧以上の10V程度までは各素子の電気的干渉をなくして独立に各素子を動作することができ、かつ電気配線数を従来の1/2に減らすことができた.素子作製の歩留り(1/3)や素子特性(7Vの電圧変化で50%の消光)は不十分であったが、空間光変調器の作成の基盤技術を確立することができた. 一方、理論解析では、5Vの駆動電圧で消光比10〜20dB、挿入損1〜2dBを目標として透過タイプの面型光変調器の素子構造の設計、最適化を行った.動作速度としては表面積が10×10um^2の素子で数GHzが期待できることがわかった. 2.進行波光相互作用の基礎研究 電子ビームにより光を一方向にのみ増幅する光増幅器の実現可能性を理論的に検討した.電磁界の一部が真空領域にしみ出す構造の光導波路に光を進行させて位相速度を下げ、真空領域を進行している電子ビームがこの光を励起する.特に電子の散乱が与える影響や光波と電子波の位相整合条件などについて、密度行列の手法を用いて解析し、増幅を得るための条件や利得定数を示した.数値例としては、60Kボルトの電子加速により、5cmの相互作用で数〜数十倍の光増幅が可能であることがわかった.
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