波長より細かな構造は光波に対して強い光学異方性と波長分散を示す。本研究は、これらの性質を利用した波長変化に鈍感な1/4波長板の実現を目指して行われた。ここでは、誘電体微細格子による透過型および金属微細格子による反射型の1/4波長板を考えた。 透過型波長板の設計では、有効屈折率という横念を使って1次元短形格子の概略の形状を決定した後、回折格子の厳密計算法を用いて性能を評価しながら形状寸法の修正を行い、より広い波長域に対応できる条件を求めた。疑似サンドイッチ構造のものでは、基準波長の士10%の波長変動に対して3°以下の位相遅れ誤差をもつものが設計できた。また、より自由度の高い設計を行うために2次元の微細格子形状を考え、その有効屈折率の取り扱い方法について検討を行い、有効屈折率の算出方法について提案するとともに、その適用範囲を明らかにした。 一方、金属微細格子における有効屈折率の有用性について調べ、効屈折率の適用範囲は格子ピッチが波長の1/100以下の小さい場合に限定されることが分かった。そこで、10.6μmの波長の光を対象に、金属微細格子による反射型1/4波長板を厳密解析法により設計し、その製作を試みた。しかし、製作においてサイドイッチの効果が大きく、所定の格子形状が得られなかった。 今回の研究では製作した素子の評価を行うに至らなかったが、評価のための複屈折の分布を測恵する新しい方法を提案した。この方法は、平面微細格子だけでなく厚みのある複屈折物質の異方性を、素子内部からの散乱光を用いて計測する方法である。実験により数mの厚さの複屈折物体の異方性を厚み方向にわたって計測することに成功している。
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