スペックル法での測定可能変位は、スペックルの粒径にほぼ対応している。本研究では50ミクロン以下の変位を測定するために10〜40ミクロンのガラスピースを使用し、アクリル樹脂を混入し粘性を持たせた塩化メチレンの接着剤に、重量比約10%混ぜることにより良好なヤングスフリンジ模様の生成を可能とした。アクリル樹脂でできたRichardらの提案した混合モード試験片を用い、試験片内部の変位場の三次元的測定を行った。異なる厚さの二枚の板を接着し、接着面上でのき裂縁に沿った変位を測定し、変位外挿法により応力拡大係数を評価した。三次元有限要素解析により変位外挿法、J積分、き裂閉口積分法による応力拡大係数の精度評価を行い、埋め込みスペックル法による実験的応力拡大係数との比較を行った。 以上より得られた主な結論は以下のようである。 1.試験片中央部から深さ3mmまでの領域では、応力拡大係数はほぼ一定となることが、三次元有限要素解析より得られた。したがって、実験的には深さ3mmにおける応力拡大係数を測定すれば、板厚中央部の応力拡大係数を評価することができる。 2.板厚中央部の応力拡大係数は、二次元平面ひずみ解析結果と大きく異なる。 3.スペックル法により応力拡大係数の三次元的測定が可能である。 4.スペックル法および有限要素法より求めた応力拡大係数は、表面部でよく一致する。 5.スペックル法および有限要素法より求めた板厚中央部の応力拡大係数は、モードI成分は比較的よく一致するが、モードII成分はスペックル法の法が高めの値を示す。
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