研究概要 |
本研究では、安価で高性能な光材料の代表的なデバイスとして注目されている液晶によりデバイスを試作し、自由空間光ビームの制御を実時間で行うことを目的としている。1年間にわたる本研究の主要な成果を以下に述べる。 (1)アレイ型液晶光ビームデバイスの試作と特性評価:液晶材料としては最も一般的なネマテック液晶材料を用い、その低電圧駆動により位相変調振幅を制御し、光ビームの偏向方向を制御するための基礎的なデータとして、ヘテロダイン法を用い電界-屈折率曲線の測定を行った。さらに、微小液晶パネルを並列したアレイ型の液晶ビーム制御デバイスを設計・試作し、その特性を評価した。 (2)液晶アレイイルミネータの設計・試作と特性評価:液晶アレイ型光ビーム制御デバイスの効率の向上と波面制御のためには、光ビームを分割して個々の数10ミクロンの液晶パネルの位置にのみ選択的に光を照射するアレイイルミネータが必要である。このアレイイルミネータとしてタルボット効果の適用を考えた。その最適化のために、すでにフレネルゾーンプレートのバイナリ化のために作製してある、フレネル・キルヒホッフの回折理論を用いたプログラムを用い、シミュレーションを行った。その結果、86%の大開口比の液晶セルを均一照射するには、3/10のタルボット距離ではデューテイサイクル値が80%の矩形強度分布を持ち、遠方領域ではメインロープに対するサイドロープの比が低くなるように設計した3レベル格子が最適であることを見出した。この設計に基づきバイナリ型のアレイイルミネータを試作し、特性評価を加え2レベル格子と比較して3%の効率向上を検出した。さらに石英基盤に反射防止膜を蒸着し、その有効性も確認した。 (3)液晶アレイ光ビームデバイスの特性評価:ミクロン単位の空間分解能を持つ屈折率変化や印加電圧の周波数応答、均一性など、この液晶パネルの光学特性と機能を実験とシミュレーションとによる解析で明らかにし、実時間ビーム偏向器用デバイスとして十分な性能を持つことを確認した。 (4)以上、平成8年度の研究成果は記載した論文の他に、1996年8月の17th Congress of the International Commission for Optics-Optics for Science and New Technology(Taejon,Korea)、秋のJapan Optics 96'で発表した。また、1997年春の応用物理学会(3件)、7月のTopical Meeting on Diffractive Opticsで発表予定である。
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