研究概要 |
本年度は,共鳴超音波法(resonant ultrasonic method)により自由半導体短形量子細線の音響フォノンモードおよびその分散関係を求めた。さらにこれらのモードの直交性と完全性を証明し、第2量子化の形式でフォノン場を展開した。以下、当該年度で得られた結果を列挙する。 ・短形量子細線の音響フォノンモードは細線軸の回りの回転対称性から、膨張収縮モード、たわみモード、ねじれ・剪断モードに分類される。・これらのモードは、フォノンサブバンド構造を持ち、ブリルアンゾーン中心近くでは、弾性体棒の基本的な振動モードの分散関係と一致する。・短形量子細線の音響フォノンモードにはエッジモードが存在する。 さらに、これらの音響フォノンと電子との相互作用に関し、変形ポテンシャルとリップル機構の2種類を考え、これらの電子の散乱への寄与について調べた。以下、当該年度で得られた結果を列挙する。 ・変形ポテンシャルに比較し、リップル機構の大きさは細線の断面積の縮小に対し著しく増大する。・変形ポテンシャルとリップル機構に因る散乱はともに膨張収縮モードによって生じる。このため、2つの機構による電子の錯乱は独立には生じない。・電子散乱に対するリップル機構の寄与は、電子の有効質量が小さいほど大きい。
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