研究概要 |
本年度は固体電解質NaZr_2(PO_4)_3系のNa,K混合物質およびPbBr_2-CuBr系の試料作製とそれらの電気伝導特性およびX線回折の実験、さらに3MHzの超音波吸収温度依存性、超音波厚さ計を用いた室温での音速測定を行った。得られた成果のなかで学会発表に用いたものを中心に説明する。NaZr_2(PO_4)_3系についてはNaを一部Kイオンに置換したNa_yK_<1-y>Na_<1.4>Zr_<1.3>Mg_<0.7>(PO_4)_3の混合イオン伝導を研究した。y=0〜1ではイオン伝導率の極大現象が見られ、イオン相関とC軸長の関わりを明らかにした。y=-1.4〜-0.7では,Kイオンのブロッキング現象が見られこれは一種の秩序-無秩序転移と思われるが今のところ結論に達していない。PbBr-CuBr系では145℃付近に見られる伝導異常について研究した。X線回折実験から(013)面の回折強度が145℃で異常変化し、原子の熱振動が異常増大することを見いだした。結晶の軸長a,b,cには、大きな異常変化が見られなかった。さらに、電気容量測定から誘電率を評価したが、その温度依存性は145℃より高温側で異常に大きくなることも分かった。これらの基礎的な研究を踏まえて基盤研究テーマである異常超音波吸収の研究を行ったところ、3MHzの超音波吸収の温度依存性(濃度0.2)は、145℃付近に異常な吸収の振る舞いが見られた。この異常性は原子の異常運動例えば、双極子モーメントの運動で、強誘電体相転移と関連したものと思われるが今の段階では、電気伝導およびX線回折測定のデータとよい整合を示しているという指摘にとどまっている。
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