東北地方の太平洋沿岸で頻発するヤマセは濃霧を伴い冷害の元凶として恐れられている。また、霧による視界不良は、陸海空すべての交通機関にとって安全運行の障害となっている。我々はコロナ放電を応用した静電式霧消去ネットを考案し、その実用化試験を繰り返し実施した。その過程で、霧の粒径が100ミクロン以上になると急速に消霧性能が低下する、ということが問題点として浮上した。本研究の目的は、この装置を線対ロッド電極構造へと改良し、こうした問題点を解決することにあり、研究成果および残された検討課題は以下の通りである。 1.静電式霧消去装置の性能評価に関する実験的検討 これまでは、静電式ネットの効率評価を単に霧の液化率だけに注目して行い、消費電力を考慮していなかった。そこで消費電力も視野にいれた“液化指数"の導入を提案し、実験例を示した。 2.超音波式霧発生器の試作 多数の小孔を穿ったステンレス薄板をド-ナツ状の円環振動子に貼りつけ、約29kHzで振動させた。その結果、円環の中心部に近い小孔ほど大粒径の霧を発生し得ることを見出した。 霧の連続大量発生が課題で、そのためには、キャビティの改良と水圧の微妙な調整が必要である。 3.線対ロッド電極構造の霧消去装置試作 線対ロッド電極構造が有効であることは既に確認済みである。試作装置では、これらの電極をインラインあるいはジグザグに配した場合について実験し、後者が優れているという知見を得た。 4.線対ロッド電極構造の理論解析 インラインおよびジグザグに配した線対ロッド電極構造の静電界解析とイオン風を考慮した霧の消去メカニズムに関する理論検討を行い、後者の優越性を定性的に解析した。
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