研究概要 |
衛星や双曲線測位システムに代表される航法電波の利用が,社会生活に身近なものとなっている.とりわけ,海上交通社会において航法電波は,船舶の衝突防止,目的地への誘導など極めて重要な役割を担っている.我が国の周辺海域においては,巨大なタンカーから小型の漁船に至るまで約2万隻に及ぶ船舶が航法電波を利用している.航法電波に対する人工構造物の電磁波環境障害の問題は海上交通路における近年の問題であり,そのため,電磁波障害の実態を定量的に収集できる新しいシステムの開発を行い,次いで,衝突防止用レーダ電波に対する障害,LF 帯電波に対するじょう乱など,それらの問題の解明並びに障害の予測シミュレーションを目的とする研究を行った.システムは多数の船舶が輻輳している海域で,船舶の海上交通を妨害しないように工夫したもので,電磁波環境問題が具体的に発生している来島海峡大橋,明石海峡大橋そして瀬戸内海の島しょ部に建設中の架橋を対象に電磁波障害の定量化と情報化,そしてファイル等へ記録化してデータバンクを作成した.さらに,位置測定がcm単位で可能なGPS(RKT-GPS/On The FLY)衛星測位システムを用いてLF帯電波の位相の測定を行い,じょう乱の理論的な解析を行った.その結果,これまで明らかにされなかった橋梁直下付近200m以内での電磁波じょう乱を導出した理論式からほぼ説明することができた.レーダ波に対する電磁波環境問題として,いわゆる偽像問題はフレネルの取扱いによる解析を行った.最後に,開発した測定システムは電波航法に関する近年の課題解決に適用するとともに,船舶の運航に際しての画像情報の抽出問題や映像の認識問題の解明に応用して成果を得ることができた.
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