1)高分子の配座に対する溶媒効果 高分子の配座は例えば蛋白質分子の折れ畳と関連して多くの研究者の興味を集めている。我々は動的な密度汎関数理論の立場から1つの高分子が単純液体(溶媒)に溶けている場合の高分子の配座を研究した。すなわち高分子の運動とそれに追随する溶媒の運動をカップルして解き、高分子の配座の時間的な変化を追跡し、それに伴う系の自由エネルギーの変化をも計算した。これにより親水性、疎水性溶媒での異なる振る舞いを説明した。これまで溶媒の効果を分子論的な立場から調べた例は少なく今後も密度汎関数理論は高分子の配座に対する溶媒効果の研究において重要な役割を果たすと期待される。 2)エントロピーによる非平衡系の解析 ガラス転移や擬似徐冷における非平衡状態を特徴づけるときに、系のエントロピーは重要な役割を果たす。我々は熱エントロピーと統計エントロピーの2種類のエントロピーを導入し、これらの間の不等式を簡単な確率モデルに対して導出し、これよりいくつかの系(2安定系、サイクル系)に対してこの不等式の意味を明らかにした。
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