従来の建材は高断熱性、高気密性を重要視して設計されるため、高い温度コントロール性を有していたが、調湿機能を考慮しなかったために、快適な湿度環境を維持するために新たなエネルギー消費を必要とする除湿器や加湿器の使用を必要とした。本研究は、温度場と湿度場が連成された吸湿性不均質材料(不均質特性は任意)の連成湿熱問題と湿熱応力問題を定式化し、数理解析する方法を提案し、吸放湿性に優れた調湿型傾斜機能材料の材料設計に応用することを目的とする。熱応力や材料の変形が緩和された調湿型傾斜機能材料を設計するためには、任意の不均質性を持った不均質材料の連成湿熱問題を解析する手法を開発せねばならないので、まず、任意の不均質性を有する不均質平板の非連成の湿熱問題の解析手法から手がけた。湿度場と温度場が連成されない場合、個々の場の問題は本質的に同一であるため、不均質平板をごく少数の相異なる線形不均質平板で近似し、この複数の線形不均質層からなる平板の非定常温度場の解析手法を新たに確立することにより、任意の不均質特性を持った不均質平板の非定常温度場が非常に精度よく解析できることを立証し、日本機械学会論文集に公表した。この解析手法を連成湿熱問題に応用するために、まず問題を非連成化し、任意の不均質性を持つ平板の湿度場と温度場を解析する問題に帰着する手法を新たに開発した。これに関しては、近く日本機械学会講演会にて講演を予定している。次年度は、このようにして解析された連成湿熱場による不均質平板の湿熱応力と湿熱変形を定式化する手法を開発し、湿熱応力と湿熱変形が緩和された調湿型傾斜機能材料平板の材料設計に応用して、保温機能と調湿機能を併せ持った傾斜機能建材を提案する予定である。得られた解析解の有効性を確認するための傾斜機能材料に対する数値計算は全てこの科研費にて購入したGateway2000のG6-200ワークステーションEXで行った。また、本研究の成果を公表するため日本機械学会講演会が開催された同志社大学と三重大学に出張した。
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