湿熱連成不均質弾性問題の数理解析法の提案と調湿型傾斜機能材料の組成設計への応用

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08650084
• 研究機関: 岩手大学
• 研究代表者: 菅野 良弘 岩手大学, 工学部, 教授 (90089160)
• キーワード: 湿熱連成弾性問題 / 不均質体 / 熱応力・湿度応力 / 連成拡散問題 / 傾斜機能材料 / 熱応力緩和 / 調湿機能 / 材料設計

研究概要

本研究の目的は、湿度と温度が連成した環境下にある不均質板や不均質円筒内の湿熱連成問題および湿熱弾性問題の定式化とそれに対する解析解を導出し、得られた解を調湿機能をもった傾斜機能材料の材料設計へ応用することであるが、連成効果の一つであるDufour効果が小さいため工業的には非連成問題として解析できることがわかったので、前年度の任意の不均質性を持つ平板の非連成非定常熱伝導問題を解く区分的線形不均質近似法で任意の不均質性を持つ傾斜機能中空円筒の非連成非定常熱伝導問題の解析を試みたが解析解が得られなかった。そこで任意の不均質性を区分的に線形近似した上で、これを指数関数表示することにより解析解を得る方法を提案した。湿度場の満足すべき支配方程式は、温度の時間変化に起因する吸放湿源の存在を除いて温度場と同一であるため、傾斜機能材料の湿度場の解析法に関しては新たに開発する必要な無い。次に、湿熱連成効果が温度、湿度の時間変化に起因していることから時間変化が大きい場合に大きな連成効果が生じるが、湿熱応力から見るとこれは応力に動的効果の考慮の必要性を示唆している。そこで、急激な温度変化を受ける傾斜機能平板(円筒)の動的熱応力を特性曲線法により解析する方法を提案し、動的熱応力の緩和に適した材料組成分布について考察を加えた。実際には、湿熱連成場として解析された湿度、温度による傾斜機能平板の動的湿熱応力の解析(動的湿熱応力に及ぼす湿熱連成効果)が重要であり、今後の研究課題としたい。
また、熱応力(湿熱応力)緩和の立場から傾斜機能材料の材料組成分布を最適化するために、遺伝的アルゴリズムを採用した。金属とセラミックスからなる傾斜機能平板に関して探索を行った結果から熱応力緩和とともに高い靱性が得られる組成分布を提案した。
最後に、未投稿であるが任意の不均質性を有する不均質平板の(Soret効果とDufour効果が同時に考慮される)湿熱連成問題と湿熱弾性問題を解析し、湿熱関連の物性値が入手し易いFRP材について数値計算を行い、湿度と温度の連成効果が不均質平板の湿熱応力に及ぼす影響を定量的に検討した。これを論文として早急に投稿するとともに、この解析手法を少し拡張することで、傾斜機能平板の湿熱応力緩和と板の反りの緩和に有効な材料組成分布の提案に応用を試みる予定である。

研究成果

• [文献書誌] 須見尚文, 菅野良弘: "傾斜機能材料をインサート材とする複合円筒の動的熱応力解析" 日本機械学会論文集(A編). 62-597. 73-80 (1996)
• [文献書誌] 菅野良弘: "断続的な熱負荷を受ける傾斜機能平板の非定常温度分布と熱応力" 日本機械学会論文集(A編). 62-598. 112-120 (1996)
• [文献書誌] K.TANAKA, Y.SUGANO: "A Multicritical Material Tailoring of a Hollow Cylinder in Functionally Gradient Materials:Scheme to Global Reduction of Thermoelastic Stresses" Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering. 135-3. 369-380 (1996)
• [文献書誌] 菅野良弘: "区分的線形不均質性近似による傾斜機能平板の非定常温度場の解析解" 日本機械学会論文集(A編). 63-606. 378-384 (1997)
• [文献書誌] N.SUMI, Y.SUGANO: "Thermally Induced Stress Waves in Functionally Graded Materials with Temperature-Dependent Material Properties" Journal of Thermal Stresses. 20-3/4. 281-294 (1997)
• [文献書誌] 須見尚文, 菅野良弘: "電磁波加熱を受ける傾斜機能材料の動的熱応力" 日本機械学会論文集(A編). 64-618. 85-90 (1998)