本研究は、繊維、マトリックスの各種複合パラメータと微視き裂分散型プロセスゾーンに吸収される破壊エネルギーとをリンクさせるための破壊力学的解析を行い、さらにこの解析結果を設計モデルとして利用することにより、繊維複合材料の高靭化のための最適化に関する検討を行うことを目的としている。 研究(1)設計モデルの開発研究代表者らがこれまで短繊維のランダム配合を対称として開発したマイクロメカニックスモデルを基礎に、分散型の微視き裂を発生させるための複合パラメータ条件に関する検討を行い、複合パラメータから機械的諸特性を予測する破壊力学的モデルを開発した。ここで、破壊力学的モデルとは繊維パラメータ(寸法、含有率、機械的特性)、マトリックスパラメータ(破壊靭性、ヤング率)ならびに界面強度、スナッピング係数の各複合パラメータに対して、繊維が完全にプルアウトする場合ならびに破断する場合について、裂発生強度や準ひずみ硬化特性を予測するものである。 研究(2)繊維強化複合材料の合成と評価放電プラズマ焼結法を用い、炭素繊維-炭化ケイ素マトリックスならびにSU304製繊維-LAS/ウラストナイトマトリックスの複合材料を試作し、3点曲げ試験法による破壊特製の評価を行った。研究(1)で作成した設計モデルにより試作材料の破壊エネルギーを定量的に予測できること、および後者の試作材では微視き裂分散型の破壊プロセスを誘起しうることを示し、さらにその複合化条件は開発した破壊力学的モデルによる推定結果と調和的であることを明らかにした。 研究(3)複合パラメータの最適化研究(1)の設計モデルを基礎にして、分散型微視き裂発生、繊維の破断ならびに巨視的に均質な繊維の複合化を行うための各条件を図式化した複合材料の設計線図を作成し、これを用いた数値実験を行うことにより高靭化のための最適繊維パラメータを決定する方法を提案した。
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