研究課題/領域番号 |
08650086
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 一夫 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30111256)
|
研究分担者 |
永野 宏治 室蘭大学, 工学部, 助手 (90212109)
新妻 弘明 東北大学, 工学部, 教授 (90108473)
|
キーワード | 地熱 / HDR / 貯留層き裂 / き裂評価 / AE / 弾性波 |
研究概要 |
本年度は、内部を流体で満たされている地下き裂の動的応答を支配している諸因子の影響を定量的に明らかにして、最終的にき裂の動特性を利用したき裂評価法を考案した。本研究の結果得られた成果を要約すると次のようになる。すなわち、流体の粘性が水と同程度に小さく且つ岩体の透水率が健全な花崗岩程度に小さい場合、き裂上下面が接触していない場合には無次元固有角振動数はき裂のアスペクト比によりほぼ決まり、一方、き裂上下面が互いに接触し従ってき裂面接触剛性が零でない場合には、無次元固有角振動数は接触剛性によりほぼ決まる。岩体の透水率が通常の地熱地帯程度の大きさであると、接触剛性が零でない場合、固有角振動数は岩体の透水率の影響を強く受け、その影響の強さは、き裂開口幅が小さいほど顕著になる。流体の粘性の影響も顕著に現れる。しかしながら、き裂上下面が互いに接触していない場合には、流体の粘性、岩体の透水率ともに固有角振動数に大きな影響を与えることはなく、き裂のアスペクト比によってほぼ決まる。流体の粘性及び岩体の透水率は、き裂面に発生する変位ギャップの振幅スペクトルに対して大きな影響を持つ。特に流体の粘性が著しく影響する。たとえば、水圧破砕に用いられるゲルと同程度の粘性では、変位ギャップの振幅スペクトルのピーク高さが、水と同程度の粘性の場合に比べて数十パーセント以下に減少する。以上の解析を踏まえて、基準振動モードの固有角振動数に対する各振動モードの固有角振動数の比とフィールドで計測された比との差の二乗和とき裂長さに関する負荷項とにより構成される評価関数を最適化することにより、き裂長さ、き裂初期開口幅、及びき裂面の接触剛性とを推定できることを明らかにした。
|