研究により得られた事項は、 (1)X線侵入深さの定義 窒化ケイ素の薄膜に円筒曲げにより応力勾配を与え、X線応力測定により得られる応力は、表面からすべての回折強度による重み付き平均応力であることが明らかとなった。 (2)薄膜のX線侵入深さ 薄膜の場合は、表面から侵入したX線が膜を突き抜けてしまうので、膜厚からの回折強度による重み付き平均応力をとることになる。膜厚が有効X線侵入深さの6倍を越える場合は、一般のバルク材と同様と見なすことができる。つまり、表面から有効X線侵入深さの6倍以上の深さが、x線回折強度のすべてに相当する。 (3)研削残留応力勾配の解析 研削残留応力分布を求めるために、表面粗さの影響を考慮したモデルを提案した。さらに、残留応力分布を求めるためにsimplex法を用いて残留応力解析を行い、実際の残留応力分布と近い分布を得ることができた。 (4)熱遮蔽コーテイング膜の解析 プラズマ溶射された正方晶ジルコニアは、a軸とc軸の距離が極めて近いので、X線測定に適した回折を決定することが必要であり、400回折格子面がもっとも測定に適している。ただし、溶射膜は気孔とき裂がより溶射された溶着層の堆積で膜が形成されているために、すべりも生じている。またひずみゲージによる負荷方法は、ゲージセメントにより膜の欠陥やすべりが固定されてしまうので正しくない。 熱遮蔽コーテイング膜の上記の複雑な機械的挙動を正面に捉えた研究がまず必要であることがわかった
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