研究概要 |
ニッケル基単結晶合金はγ相とγ′相からなり,γ′相は転位の運動を妨げる.特に850℃以上の高温では,転位は,γ′相をほとんどせん断せず,γ相中のみを運動する.つまりニッケル基単結晶合金は,微視的にはγ相とγ′相が周期的に配列した複合材料であるから,この材料のクリープを解析するためには,上述のような微視構造を考慮する必要がある.周期構造を有する複合材料のクリープを解析し得る理論としては,いわゆる均質化理論が考えられる.しかし,この理論によるクリープ解析の手法は,定常クリープを除けば,まだ定式化されていない.そこで本研究では,均質化理論による非定常クリープの解析手法を定式化し,次のような結論を得た. 1.変位速度の擾乱を弾性項と粘性項に分離することにより,巨視的応力速度と巨視的ひずみ速度の関係式およぴ微視的応力の発展式がこれらの項に含まれる2種類のY-periodic関数によって表された. 2.上に述べた2種類のY-periodic関数を求めるための2つのユニットセル問題を導いた.これら2つの問題は有限要素法により解くことができる. 3.本理論は,巨視的ひずみか巨視的応力のいずれかが規定される場合だけでなく両者が混合して規定される場合にも有効である. 4.上に述べた理論をニッケル基単結晶合金の多軸クリープ問題に適用したところ,微視的構造への顕著な依存性が明らかとなった.
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