平成8年度は以下の内容を検討した。 (1)胸廓および後部支持組織の詳細なモデル化を通して後部支持組織の剛性の実体が椎間間接であり、その面の傾きと大きさが重要であることを確認した。 (2)上端拘束を取り除いた場合の胸椎の過成長による変形解析を行った結果、発育急進期の胸椎後彎の減少傾向と一致した変形が確認された。この変形に基づく1次から4次までの線形座屈解析を行った。各モードの特徴を観察すると、1次から3次モードまでは、下端から上方に向かって一方向の曲率を持つそれぞれ側屈モード、回旋モードおよび前屈モードとなっている。これらのモードは単調な変形であるために、実際にこれらが発生したとしても人体の適切な姿勢制御によって矯正できるものと考えられる。それに対して、4次モードは曲率が双方向に変化する側方彎曲モードとなっている。このモードは胸椎部に局所変形を含んでいるが、胸椎部にはこの局所変形を制御できる適当な筋が存在しない。このことから、この側方彎曲モードは姿勢制御だけでは矯正不可能であると考えられる。さらに、モード形状の詳細な計測値は臨床結果とよく一致した結果となった。さらに、幾何学的非線形性(大変形)を考慮した解析を行った。その結果、有限要素の歪みにより解析不能に陥った。有限要素モデルの再構築の必要性を確認した。 (3)これらの数値解析の結果が安定に存在することを確認するために脊柱模型を作成し、椎体の成長をねじ機構によって実現した。しかしながら、回旋変形が拘束できなかったことと、成長による椎間間接の剥離のために、座屈現象は観察されなかった。成長機構の再検討が必要であることを確認した。
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