平成8年度までの研究によって、胸廓付脊柱有限要素モデルを用いた胸椎の過成長による線形変形解析とその変形に基づく線形座屈解析によって側方彎曲の形態を有した4次モードが胸椎型突発性側弯症の成因として有力であることを確認した。しかしながら、大変形(幾何学的非線形性)を考慮した変形解析と座屈解析は有限要素の歪みによって解析不能に陥った。また、実験モデルによる検証は回施変形が拘束できなかったことと、成長による椎間間接の剥離のために、座屈現象は観察されなかった。 これらの結果を踏まえて、平成9年度は以下の成果を得た。 1.幾何学的非線形解析に耐え得る精密な胸廓付脊柱有限モデルを再構築した。しかしながら、モデルの自由度数が大き過ぎて、現有の有限要素法解析システムでは解析不可能であった。来年度、本学に導入される計算サーバを利用して解析することを目指して現在準備中である。 2.数値シミュレーションによって得られた座屈モードの存在を力学模型によって確認することを目指して、成長のメカニズムを備えた脊柱模型を設計し、実験方法を検討した。昨年度まで検討してきた実験方法は、成長過程を再現して、途中で現れる座屈現象を観察することを検討してきた。しかし、現象本来の不安定さと現象の検出精度に問題があった。今年度は、実験方法を根本的に見直し、加振実験による計測法を検討した。成長量と固有振動数の関係から、座屈に至る成長量を外挿する方法である。予備実験の結果は良好であった。
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