研究概要 |
本研究では,CFRPの層間の樹脂層を制御した積層板を作製し,層内破壊とも比較し,かつ界面強度を変化させることによって,積層板の破壊に及ぼす層間・層内メゾ構造の影響を検討するとともに,さらに靱性の高い材料を開発するための指針を得ることを目的とする。そのため,層間樹脂層厚さ制御,樹脂層の樹脂の複合化を試み,樹脂層のない層内破壊とも比較することにより層間の樹脂層の靱性と厚さの影響を分離解析し,その結果を基に最適化を図ることを目的とする.本年度の成果は次のように要約される. (1)層間樹脂層を熱可塑性樹脂で強化した積層板のモードI特性:CF/エポキシ積層板において,層間の樹脂層を靱性の高いポリプロピレンをベースとする熱可塑性樹脂で強化した積層板を作製し,モードIの層間特性を検討した.破壊靱性値は2kJ/m^2となり,熱可塑性樹脂をマトリックスとする高靱性CFRP並となり,特性の向上が著しいこと,き裂を進展させても,この抵抗の向上は維持されることが明らかとなった.き裂は層間の熱可塑性樹脂とベースCFRPの境界層近くを伝ぱしたが,この領域で熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂が複合化していることが,じん性向上の主原因であることが明らかとなった. (2)層間樹脂層を熱可塑性樹脂で強化した積層板のモードII特性:同様に,モードIIの層間特性を検討した.靱性値は10kJ/m^2以上と著しく大きな値となった.モードIと異なり,層間の熱可塑性樹脂層全体が大きく塑性変形しており,その厚さによるエネルギー吸収がじん性向上に大きく寄与することが明らかとなった.
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