研究概要 |
本年度は耐熱材料の一つとしてInconel X-750を選び,この材料の切欠材について高温下におけるき裂発生とひずみの関係を調べた.また耐熱耐食材料としてセラミックスならびにセラミックス溶射材を選び,セラミックスについては高温疲労強度ならびにき裂開口変位計測を行い,セラミックス溶射材料については生体内環境下における疲労挙動の検討を行った.得られた結果を以下にまとめて示す. 1.高温下Inconel X-750の切欠底におけるひずみを計測し,き裂発生寿命との関係を調べた.この材料の切欠底においては塑性ひずみがあまり生じないことがわかった.応力集中率の影響は従来報告されているような応力集中率が大きい方がき裂発生寿命が長くなる傾向とはならず,その逆の傾向を示した. 2.二種類の炭化ケイ素セラミックスを用いて,1200℃の高温下における静疲労,動疲労特性を調べた.ここでは荷重負荷時間の評価が正確に行えるようにするために矩形波両振り負荷が行えるような試験機を試作した.その結果,この材料の疲労挙動には繰返しの効果は極めて少なく,時間依存が支配的であることがわかった.また破面観察および表面観察から,これら炭化ケイ素セラミックスに発生したき裂は安定成長領域が極めて少なく,急速に不安定破壊へ移行した痕跡が確認された. 3.レーザスペックルを用いた正確なき裂開口変位計測手法を提案すると共に,アルミナセラミックス,窒化ケイ素セラミックスの3点曲げ疲労試験において,発生した微小き裂の開閉口挙動を計測した.セラミックスの負荷荷重Pーき裂開口変位COD曲線には固体摩擦型のループの拡がりはわずかしか確認されなかった.窒化ケイ素セラミックスのP-COD曲線の勾配はき裂が進展しないにも関わらず変化するなど複雑な挙動を示していた.コンプライアンスから計算されるき裂長さと表面でのき裂長さは異なり,表面では正確なき裂長さの評価が難しいことがわかった. 4.生理食塩水中でのアルミナセラミックス溶射材の疲労試験を行い,同時にレーザスペックルゲージを用いて応力-ひずみヒステリシスを計測した.疲労初期における応力-ひずみ関係は基材の特性のみが現れていたが,疲労過程中期からはヒステリシスループに局部的に無ひずみ領域が生じ,後期課程においてはこの領域が大きくなった.破面観察および疲労過程中の縦断面観察の結果,疲労初期に基材にき裂が発生,その後アルミナセラミックス溶射層にき裂が入り,その後,ここから生理食塩水が流入しき裂進展を加速することがわかった.
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