研究概要 |
本年度は耐熱材料の一つとしてボイラ・熱交換器用合金鋼STBA22を選び,この材料の切欠材について高温下における疲労き裂発生とひずみの関係を調べた.また耐熱耐食材料として常圧焼結セラミックスならびにアルミナセラミックス溶射材を選び,セラミックスについては高温疲労強度ならびにき裂開口変位計測を行い,またセラミックス溶射切欠材の高温疲労挙動の検討も行った.得られた結果を以下にまとめて示す. 1.高温下STBA22の切欠底におけるひずみを計測し,き裂発生寿命との関係を調べた.この材料の切欠底においては塑性ひずみがあまり生じないことがわかった.この鋼においてもき裂発生寿命は切欠底のひずみと一対一の対応関係があることがわかった.また切欠底におけるNeuber則の成立度合いはこれまで調べてきたSUS304やSUS316FRの結果の延長上で考えることができることがわかった. 2.窒化ケイ素セラミックスを用いて,1200°Cの高温下における静疲労,片振り・両振り動疲労特性を調べた.ここでは荷重負荷時間の評価が正確に行えるようにするために矩形波両振り負荷が行えるような安定な試験機を試作した.その結果,高温下繰返しにより強化されることがわかった.すなわちこの材料の高温下動疲労寿命は静疲労のそれに比べて長くなることがわかった.さらにその効果は圧縮を伴う両振り負荷においてより顕著になることもわかった. 3.レーザスペックル法を用いてアルミナセラミックス,窒化ケイ素セラミックスの3点曲げ疲労試験において発生した微小き裂の開閉口挙動を計測した.セラミックスの負荷荷重P-き裂開口変位COD曲線には固体摩擦型のループの拡がりはわずかしか確認されなかった.窒化ケイ素セラミックスのP-COD曲線の勾配はき裂が進展しないにも関わらず変化するなど複雑な挙動を示していた.き裂先端で有効に作用していると考えられる応力拡大係数Ktipを求め,き裂進展速度を整理した結果,短いき裂の進展速度は長いき裂のそれに比べて加速することが有ることがわかった. 4.アルミナセラミックス溶射切欠材の高温疲労試験を行い,同時にレーザスペックルゲージを用いて切欠底のひずみを計測した.応力-ひずみ関係は基材の特性が顕著に現れる結果となった.溶射切欠材においては溶射膜の効果は極めて小さいことが明らかとなった.
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