本研究は、繊維強化複合材料の強度信頼性を向上させるための特性発現因子の解明を目的とするものである。まず、繊維を棒要素、マトリックスを4節点アイソパラメトリック平面応力要素で代替した複合材料強度予測の有限要素シミュレーション手法を考案した。供試材料として連続ボロン繊維強化エポキシ樹脂複合材料を用い、本シミュレーション手法の有効性を検討するとともに、強度信頼性に関わる界面はく離の役割について考察した。その結果、強度の平均値を高め、変動係数を減ずる界面せん断強度の存在を確認した。この値はマトリックス材料のせん断強度より幾分低い値を取るものと推測される。また、強度信頼性は破断繊維周りの損傷性と大きく関係することがわかった。つまり、適度な界面はく離は、繊維破断の累積効果を助長し強度信頼性を向上させる役割を担うことを確認した。 一方、繊維強化複合材料の強度信頼性を高める特性発現性を確率モデルによて見いだすことを目指し、複合材料内の繊維破断点が集積しながら成長(以下、クラスターと呼ぶ)する現象を状態推移として表現し、2次元配列Chain-of-bundles確率モデルへマルコフ過程の導入を図った。題材として連続ボロン繊維強化アルミニウム材を想定した結果、クラスターの成長につれて両過程ともに低寿命域における分布の傾きが大きくなり、破壊確率曲線はマスターカーブに近づくことを明らかにした。この手法を拡張し、繊維破断に付随する界面はく離やマトリックス割れを考慮したマルコフ過程についても検討した。その結果、従来の実験事実やFEMによるシミュレーション結果と定性的に一致することを見いだした。さらに、本手法を3次元配列Chain-of-bundles確率モデルに対応できるようマルコフグラフを拡張し、同様な傾向が発現されることを確認した。
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