近年、耐熱材料として傾斜機能材料の研究が盛んであるが、傾斜機能材料を用いた機械や構造物の耐衝撃性の評価のための解析法はまだ確立されていないのが現状である。本研究では、研究代表者が行ってきた波動伝ぱ解析に関する蓄積をもとに、波動伝ぱの状況を詳細かつ高精度に解析できる従特性曲線法を傾斜機能材料のような不均質体に対する三次元波動伝ぱ問題に拡張した。具体的には、不均質体を多くの薄い層に分割して積層体とみなし、それぞれの層の材料特性をさまざまに変化させる解析手法を提案した。また解析結果から、不均質体の耐衝撃性向上のための最適な材料設計について検討を行った。 平成8年度は、第1段階として、解析理論の構築と理論式の導出を目指して研究を行った。得られた理論式を計算プログラムに組み込み、周期的に2種類の材料を積層した層数の少ない場合の積層板の解析を行い、その動的特性を明らかにした。研究成果は日本機械学会論文集A編に掲載された。 平成9年度は、弾性/粘塑性体構成式を採用し、金層積層板の塑性変形も含めた波動伝ぱ解析を行った。解析結果から、積層条件を考慮することにより衝撃エネルギー吸収特性のよい材料ができることを明らかにした。この研究成果も日本機械学会論文集A編に掲載された。 平成10年度は、耐衝撃性を向上させることのできる最適な材料組成を詳細に検討することを目的とした。平成8、9年度に作成した計算プログラムを用い、傾斜機能材料を想定した不均質平板の材料組成分布をいろいろと変えてデータを収集した。その結果、不均質平板に発生する応力値を最も小さくできる材料組成分布が存在することを明らかにした。このことより材料組成を適切に制御することで不均質平板の耐衝撃性が向上するという確証を得ることができた。この研究成果は日本機械学会講演会で発表を行った。
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