研究概要 |
本研究の新型ドリルによるS50Cの深穴あけでは,切削条件が適切であればドリル径の5〜7倍の深さからドリル溝のピッチに等しい長ピッチ型の切りくずが生じ,連続高送りで穴あけできる.この長ピッチ型切りくずを生じさせるには第一主切れ刃の傾斜角の大きいことが最も大きな要因であるが,第二主切れ刃の影響も大きい.この第二主切れ刃に約4度のすくい角を付けたところ,0度のものより長ピッチ型切りくずが生じやすくなった.(のみ刃型にすればスラストが過大で実際上加工困難である.)S50Cの穴あけで生じた定常状態の長ピッチ形切りくずの切削比は,定常状態の円すいらせん形切りくずの切削比に対し外端で極端に,内端でも少し小さくなっており,安定した長ピッチ形では切りくずにかかる拘束によりせん断域では切りくず全面に圧縮応力を生じ,せん断角が小さくなる.溝にTiNコーティングすると長ピッチ形切りくずが生じないのは,この結果により説明できる. きりくず形態の変化に及ぼす切削温度の影響について次のことが分かった.被削材にS50Cを用い,ドリル回転数と送りを一定にし,加熱穴あけ,乾式,湿式と条件を変えると,長ピッチ型切りくずの生じる穴深さは変化する.ドリル中心の通過位置でのその時の切削温度は乾式,湿式の差はほとんどないが,加熱穴あけの場合被削材の加熱温度を高くするとともに高くなった.第一主切れ刃の中央位置で切れ刃から1mmのすくい面で切削温度を測定した結果,湿式,乾式,加熱切削,ドリルの摩耗状態に関係なく約400℃で長ピッチ形に変化した。これは上記第一主切れ刃による切りくずの変形が主要因であることと関連している。 切削抵抗の周波数解析でドリル回転による変化,歩行現象を説明できる結果は出たが,切りくず形態の変化を説明できる結果は明らかでない.
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