研究概要 |
昨年開発したねじ状工具による転造加工用簡易シミュレータおよび工具修整歯形設計用エキスパートシステムは,標準歯形工具による実験結果から得られた転造率分布のデータベースを利用して転造量を算出し,転造後歯形を予測するという簡便な方法であったが,歯形解析に関して実験結果とよく一致していた.一方,このシミュレータにおいて転造率分布に関するデータベース構築を,実験ではなく数値解析から直接行うことができるようになれば,本転造システムは一層の知能化を図れる.そこで本年度は,汎用のFEM解析ソフトABAQUSを用いて,工具と素材が境界面で転がり滑り接触をしながら転造加工を行う,実際の加工状態に近い変形モデルを作成することにした.第一段階として,解析結果の妥当性を確かめるために,既に多くの実験結果が存在する,従来の2ダイスプランジ方式による,平歯車転造用2次元平面ひずみFEM解析モデルを作成した.モデルは駆動方式や荷重付加方式の違いにより4種類とした.主に転造量分布に関して実験結果と解析結果を比較したところ,いずれのモデルにおいても両者は非常によく一致していた.第二段階として,同様の方式で,強制駆動のはすば歯車転造用3次元FEM解析モデル作成した.転造量および転造後歯形に関して,解析結果と実験結果を比較したところ両者はよく一致していた.また解析結果から,実転造量に歯の弾性たわみ量を加えた値と最大歯面垂直荷重に強い相関関係があり,それらを用いて転造率分布を直接算定できることが明らかになった.従ってこの解析モデルをねじ状工具を用いる場合に拡張し,解析から得られた転造率分布を無次元化してデータベースを構築すれば,数値シミュレーションだけから,転造加工用シミュレータや工具修整歯形設計用エキスパートシステムを完成させることができると思われる.
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