研究概要 |
加工システムの高度自動化のため,切削工具の加工機能を加工中に自動監視する必要性が高まり,様々な方式によるセンシングの研究が活発に行われてきた.しかし,なお種々の難点があって,確実で簡便な手法が確立していなかった.本研究は切削振動に伴って発生する音響(切削音)の変化に着目し,比較的遠方から非接触で工具損傷を検出監視する方式を確立することを最終目標とし,以下の知見を得た. 1.切削音と工具損傷の関係 工具損傷による切削音の変化を諸切削条件で調べ,その具体的特性を明らかにした.切削加工の需要の多い炭素鋼S35Cの旋削加工を中心に種々の切削条件で切削加工実験を行い,切削工具の損傷と発生する切削音の特性(レベル,周波数等)および工具振動との関係を実験的に研究した.工具損傷によって,切削音の主スペクトルのレベルが増大すること,その主スペクトルの周波数が比例的に低下すること,その原因には工具振動の高調波歪が考えられること等が判明した.その結果切削音を用いる工具損傷のインプロセスセンシングは十分可能で有用であることを明らかにした. 2.複数の切削音源の弁別 複数の音響センサを利用して,音響の到達時間差,到来方向を調べ外来雑音や他の工作機械の切削音を弁別,遮断し,目的とする特定の工作機械の切削音のみを検出する手法を検討した.弁別は音響センサに指向性を持たせることにより行った.指向性を持たせる方法は,パラボラマイクロホンによる方法とマイクロホンアレーによる方法を採用し,比較検討した.切削実験では2台の平行して並んだ旋盤で同時に加工した際の各切削音の弁別の可能性を検討した.その結果,いずれの方法においても複数音源が混在する環境下であっても,特定の音のみを検出できること,音源位置が不明な場合であっても、その位置を推定することが可能であること等を明らかにした.
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