研究概要 |
平成8年度は芯線であるピアノ線ワイヤの表面にスパイラル状の絶縁被膜を形成して,その導電部のみにダイヤモンド砥粒を電着する方法を中心にそのワイヤ工具を用いた時の加工特性を検討した.具体的には,本方法では芯線に10μm程度のニッケルメッキをダイヤモンド砥粒を電着する際の下地として行う.次にスパイラル状にテフロンコーティングした後,導電部のみ陽極溶解法により表面の熱影響部を除去し,ダイヤモンド砥粒を電着してワイヤ工具の作製を行った.今年度得られた主な成果を以下に述べる. 1.試作ワイヤ工具(スパイラル電着ワイヤ工具)の引張試験を行った結果,テフロンコーティングする際の焼成温度が250℃以下の場合には引張破断荷重の低下は見られず,芯線のみの引張破断荷重より大きくなることがわかった. 2.試作ワイヤ工具のねじり強度を評価するために、破断ねじり角の挙動を実験した.その結果,全面にダイヤモンド砥粒を電着したワイヤ工具に比して最大3倍程度まで破断ねじり角が向上することが明らかとなった. 3.試作ワイヤ工具を用いて切断実験を行った結果,全面にダイヤモンド砥粒を電着したワイヤ工具に比して約1.8倍まで切断能率は向上した. 4.試作ワイヤ工具を用いて加工精度に関する検討を行った結果,加工面の表面粗さは試作ワイヤ工具の表面に電着されているダイヤモンド砥粒が減少するために全面に電着したワイヤ工具より増加する結果を得た.また,加工面のエッジ部で生じるチッピングは全面に電着したワイヤ工具に比して試作ワイヤ工具では若干増加する傾向を示した.
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