研究概要 |
平成9年度は,ダイヤモンド電着ワイヤ工具のさらなる高性能化を目的として,2本のピアノ線(φ0.1mm)をねじり応力の発生を伴うことなく縒り合わせたものを芯線として用いて,その表面にダイヤモンド砥粒を電着させたワイヤ工具(縒り線ワイヤ工具)を試作し,その加工特性に関して実験的に検討を行った.以下に,今年度において得られた結果を要約する. 1.縒り線ワイヤ工具の材料強度特性として引張試験及びねじり試験を行ったが,その結果,縒り線ワイヤ工具は工具断面積が通常のワイヤ工具と比較して小さくなることに起因して,破断荷重は通常のワイヤ工具の70%程度となるが,破断ねじり角は3倍程度にまで向上することが分かった. 2.縒り線ワイヤ工具は通常のワイヤ工具と比較して高い切断能率を示し,さらには縒り線ピッチを細かくすることによって切断能率は向上し,その値は最大で通常のワイヤ工具の2倍程度となる. 3.縒り線ワイヤ工具の加工メカニズムを幾何学的に検討し,また,加工後のダイヤモンド砥粒のSEM観察やEDS分析を通じて,縒り線ワイヤの効果は加工部への加工液の流入出や切粉の排出を促進させるチップポケット効果であることが明らかとなった. 4.縒り線ワイヤ工具の加工精度に関して検討を行った結果,通常のワイヤ工具と使用する砥粒が同一であることから,切断溝表面に発生するチッピングや作製されるウエハの表面粗さは通常のワイヤ工具と同程度であることが明らかとなった.
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