研究概要 |
微細加工が容易な構造として,吸込側をバルブなし,吐出し側をリ-ド弁付きとする往復式の圧縮機構造を提案し,ピストン直径1mm,ストローク3mmの空気圧縮機を試作した.リ-ド弁には厚さ15μmのポリエチレンフィルムを用いた.一方,性能の理論解析のために,この圧縮機のシミュレーションモデルを作成した. 性能試験の結果,ピストン振動数が100Hzのとき,無給油時の最高吐出し圧力は80kPa(ゲージ)であった.設計時の予測では100kPaの圧力に到達できる見込みであり,この実験性能はかなり悪い.しかし,給油時の実験では,吐出し圧力100kPaでも体積効率がほぼ100%となり,当初の目標圧力に到達した. レーザー変位計およびデジタルオシロスコープを用いて,吐出し圧力0の状態でリ-ド弁の運動測定を行った.その結果,リフトと応答性は良好であったが,閉止時にバルブが完全に閉じず数μmだけ浮き上がっていることを示唆するデータを得た.浮き上がりは高圧空気の漏れをもたらすが,シミュレーションにこの効果を追加した結果,浮上がりによる性能低下は非常に大きいことがわかった. 給油によって性能が向上するのは,要素実験などから判断して,リ-ド弁の密封性の向上の効果が大きいと考えられる.給油量は1時間に1滴程度の微量で,このような微量で密封の効果が長時間持続することは通常の大きさの機械ではあり得ず,微細構造のために生じる一種の寸法効果と思われる.微細構造の中では,部材の親油性や油の表面張力などが油の挙動に大きく影響することが予想される.これについては今後の研究で更に追求を行い,マイクロ圧縮機に適した新しいバルブ構造を見つける手がかりを得たい.一方,吐出し圧力については,給油により当初目標の100kPaよりもさらに上昇できることが明らかとなったので今後の実験で確認したい.
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