研究概要 |
昨年度提案し試作マイクロ圧縮機について,今年度は吐出し圧力200kPa(ゲージ)を新たな目標として実験ならびに解析を行い、以下の結果を得た. 1.昨年度よりもさらに高速である100Hzまでのピストン振動数でマイクロリ-ド弁の運動測定を行った.この結果,弁板が長い場合にはその開閉動作に高次の振動が重なり,マイクロリ-ド弁の設計においても通常の大きさの弁と同じく振動学的な考慮が必要であることがわかった.さらに,弁板の固有振動数測定等の要素実験を行い,厚さ10μmの薄膜板でも通常の大きさの振動理論がよく適用できることを確認した. 2.要素実験によりリ-ド弁付近の油の挙動観察を行った.その結果,シリンダに微量の油滴を供給すると,その油は直ちにリ-ド弁上部に上がり,長時間弁付近に滞留して弁板と弁座との間のすきま密封に有効に働くことが確かめられた.通常のサイズの圧縮機では,油は空気とともに出口管路側に直ちに流れ去り,密封効果を持続させるためには連続的な給油が必要である。今回観察された油の滞留挙動は微細機構故の寸法効果とみなすことができ,今後のマイクロ空気圧機器の弁設計に対して有益な知見を得た. 3.以上のほか,マイクロ圧縮機のみならず,マイクロ空気圧システムの研究一般に適用できる設計上の種々のノウハウを蓄積した. 4.吐出し圧力の最高値としては,250kPa(ゲージ)を達成した.しかし,高圧下では弁板の耐久性が不十分で,その改良が今後の課題として残った.これを解決できれば,さらに高い吐出し圧力の達成の可能性が十分ある.マイクロ冷凍機への応用などもターゲットに考え,今後の研究でさらなる展開を図っていきたい.
|